2021/06/12 01:12



アートをやっているなんて意識はないけど、今やっていることがアートという共通言語でしか通用しないならアートと括るしかない。

で、そのアートは素人がどうのこうの、ワーワー言うもんでしょ、と思う。

アートは、99.99%の受け手の素人が支えているんだから。

素人が偉そうに、と言われ出して憚らないんだったら、自分は音楽や映画に一言も言及できねえわって口を閉じてしまう。


写真の話しをするとき、写真の感想を聞いたときに、それこそ99.99%の人が「私は(僕は)写真の素人なので...」と前置きをする。

言われた瞬間にガックリくると同時に、そういうアートをする人=上級な者という間違った観念に覆われてきた帰結のようにも思えてその人を責める気にもならない。


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ストリートスナップファイトは、久場雄太氏をディレクターに据えて作りました。

彼はこれまで写真畑に身を置いたことはないけど、彼の人生の中でたくさん写真と関わる体験をしているであろうことを感じ取りました。

製作は、電話と、データ共有のメールのやり取り、終盤は紙に刷ったものを確認してもらう往復書簡のみでとうとう一度も面会することなく仕事を終えました。

最初から最後まで、「オレは写真の素人だから...」という枕詞を言わなかったことが彼を信用しうる理由のひとつになっていたように思います。


作業を始めた冒頭、こちらから50コマくらいの写真を見てもらい、その中から良いと思ったものを残す、その残されたものの共通項を追求し、再撮影、また、ジャッジをしてもらうことを繰り返しました。

彼が序盤に言い残したことがこの作品の屋台骨になったと思います。


「何が写っているのか明確なもの、立体造形物、そういう具体性のあるものは一切省こう」


その言葉をきっかけに、それまでの「ストリートで撮るモノクロハイコントラスト」から「具体性(=物語性)を排除した抽象表現」へシフトし、散漫だった視点をより集約化できたと思います。


それまでの撮影過程では、本当に工事現場によく行ってたし、重機もさたくさん撮っていました。

だけどそういう派手なものを撮っている最中って、実はもっとも作品の核となるハイコントラスト(白黒の明暗差)の視点が欠けていることを彼は見抜いていたんだなということに気づきました。


この重機写真も彼とのセッションがなければきっと写真集の中に入れていただろうと思うのですが、バッサリと切ってもらいました