2021/06/30 23:46



技術の話し。理論の話し。

写真の勘所は、「露出」をどう測るか...

風景写真の大家、アンセル・アダムスが理論化した「ゾーンシステム」を勉強されることが写真表現の幅を広げてくれると思います。


ネガフィルムからペーパーにプリントする際、その再現には輝度域というのがあり、ペーパー上に表現できない部分があります。アンダーに振れすぎると黒潰れし、オーバーに振れすぎると白トビしてしまう。

つまり、その写したシーンの中の全ての明暗を黒と白、グレーの諧調で再現できるのではなく、輝度域の限界の中でしか表せない。

僕はモノクロで風景を撮る際、白トビを妥協するというか、むしろ白トビすることを歓迎し、逆に黒潰れをしないようアンダー側の露出を測るようにしています。

これによって影の黒い部分は、真っ黒ではなく、ディテールがギリギリ薄っすらと見えるくらいの黒になるようにしています。

それを、見る人によっては真っ黒と捉えてしまうかもしれませんが、ネガにギリギリ情報が残っている真っ黒寸前の黒にしていることがモノクロ表現の生命線だと考えています。


------


写真集冒頭、「ストリートスナップファイトの作り方」という、料理でいえばレシピ公開をしていますが、ゾーンシステムとは何かを知っていること、その露出測光のためにはスポットメーターという機器が必要なことなど、準備がなければ何の価値も意味もない箇条書きになっています。


昨今のアナログ回帰は歓迎すべきことと認めつつ、それがデジタル脳によるアナログ表現になっているなら「デジカメでもこんな写真撮れるやん」の議論の網からは一生出られないわけで、最後は精神論を拠り所にフィルムを使ってしまってるなら、「お金がかかるから」を理由にいつか終わらせてしまうことのように思うわけです。

大事なモチベーションは、ずっと探求し続けられる奥深さに気づけるかだと思います。