2021/11/21 23:20

Directed by Jim Jarmusch 


今、JIM JARMUSCHの企画上映を利用して過去作を観ています。

12作のラインナップ中、7作完了。折り返し。

もはや、上映スケジュールに合わせて生活や仕事を組んでいる(ダメ人間だな、このヤロー)

ジャームッシュ作品には退屈なシーンがあって眠気を誘われるんだけど、それでもなお魅了される、言葉にしづらいポイントがあるように思った。

ただ、昨日今日観た『NIGHT ON EARTH』『GHOST DOG』には退屈な時間がなかった。いや、ここまで何本も観てきてようやく身体への順応が起こったからかもしれない。


#nightonearth を検索してみれば多くはウィノナ・ライダーのタバコの吸い方がカッコイイ、真似したい、というのが出てくる。

僕もそう感じた。

映画を観る人間の価値観や人生観なんてバラバラなはずなのに、何がクールと感じるか、その一点を突く表現は卓越してるんだろうと思う。

ウィノナの、ブルーカラーを象徴するような服装、車の運転、家庭を築いてたくさん子を持ちたいと口にするセリフ、そういうものが集約されたあのキャラクターのほんの些細な所作としてのあのタバコの扱い方に僕らはグッと引き込まれてしまう。

そういう普遍的な美をつく表現を、皆探していてもなかなか形に落とし込むことが出来ない。

NIGHT ON EARTHはウィノナばかりが注目されるけど、僕は1章から4章まで甲乙つけがたい素晴らしい物語だと思った。5章めは静かなフィナーレを迎えるための必然のポジションだったと思う。

5章すべての登場人物が実在しているようなリアリティを感じた。

この現実の生活感から近い射程を描くのがジャームッシュの真骨頂だと感じた。

'90年前後、NYで黒人がタクシーを呼びとめても止まってくれないこと、行き先がブルックリンなら乗車拒否されること、たまたま止まったタクシーの運転手が東ドイツから出国してきたこと、こういった現実の時代描写は、嫌々義務教育を受けていた時期に観ていてもまったく頭で処理することができなかったと思う。

だから今観れていることに運命を感じるし幸運なことだと思う。


そして、日本の武士道や黒人へのリスペクト、そしてタバコを主題にした映画を作ってしまうような、それを支持していてはマイノリティ側に入れられてしまうことを憶することなく前面に出す、世の中への抗いをも感じた。肝が据わっている、媚びない、と言い換えられる。

ここまで7作観て、FUCK YOUというセリフを100回以上は聞いてると思う。ニガーもね。

マイノリティを描くっていうのは、お上品を心がけ、コンプラを尊重していてできるもんじゃなく、現実に口にされる言葉や行動を拾い上げることでしかないんだろうと思う。

そして、そういう現実に飛び交う汚い言葉から僕らは勉強し、他人の生活や人生をイメージすることができる。


SNS社会になり、承認欲求や同調圧力がより強烈になった世の中では一層難しいんだろうけど、私は私として生きる、私が大事に思うことを表現する、これに邁進すればいいんじゃないのってジム・ジャームッシュは伝えてくれているように思う。

もちろんその生き苦しさも含めて。


少なくとも人生て一度もタバコを吸ったことがない僕の願いは、タバコがこの世からなくなってほしくない、ということだ。

タバコがなくなる、それが人間の営みを細らせるということを感じてならないからだ。